
朝8時ちょうど、標柱の前に立った。
2026年8月7日、南アルプス・仙丈ヶ岳。 日本3,000m峰21座を5年で登る「PEAK NOTES」の2座目は、テントを張ってから登る山だった。
- はじめに
- 実測データ(Garmin計測)
- 装備(1泊テント泊・8月)
- 8月6日——テントを張りに行く日
- 17:14 テント場のシカ
- 19:10 星を撮る1時間
- 04:33 出発——ヘッドライトを消した時刻
- 06:28 六合目——森林限界を越える
- 07:04 小仙丈ヶ岳——富士山と北岳が並ぶ
- 08:00 仙丈ヶ岳——3,033m
- 08:35 仙丈小屋——持ち越した一杯
- 下山——同じ道、違う空
- 振り返り——2/21
- 使用ギア一覧
- 関連記事
- Instagram|写真と舞台裏
はじめに
1座目の富士山は日帰りだった。 2座目の仙丈ヶ岳は、北沢峠にテントを張って一泊した。
理由は単純で、この山へのアクセスがそういう形をしているからだ。登山口の北沢峠へは戸台パークからシャトルバスに乗るしかなく、始発でも登り始めは遅くなる。前日に入ってテントを張り、翌朝の暗いうちに歩き出す。それが最も無理のない組み立てだった。
誤解のないように書いておくと、テントを担いで山頂まで登ったわけではない。テントは張ったまま置いていき、必要なものだけをザックに移して往復する。担ぐ山行ではなく、拠点を作る山行だ。この違いが、当日の身軽さをそのまま決める。
ルートは小仙丈尾根の往復。アクセスとコースの詳細は以下の記事にまとめてある。この記事では、当日の記録と判断に絞って書く。
実測データ(Garmin計測)
| 項目 | 実測値 |
|---|---|
| 日付 | 2026-08-06(木)〜07(金) |
| ルート | 北沢峠・長衛小屋テント場 ⇄ 仙丈ヶ岳(小仙丈尾根 往復) |
| 距離 | 11.3km |
| 累積上り | 1,161m |
| 行動時間(休憩込み) | 7時間06分 |
| 平均心拍 / 最大心拍 | 149 / 181 bpm |
| 消費カロリー | 2,635kcal |
チェックポイント通過時刻(往路)
| 時刻 | 地点 |
|---|---|
| 04:33 | 長衛小屋テント場 出発 |
| 04:44 | 北沢峠 |
| 04:58 | 一合目 |
| 05:12 | 二合目 |
| 05:34 | 三合目 |
| 05:49 | 四合目 |
| 06:06 | 大滝ノ頭(五合目) |
| 06:28 | 六合目 |
| 07:04 | 小仙丈ヶ岳(2,864m) |
| 07:24 | 八合目 |
| 07:41 | 仙丈小屋 分岐 |
| 08:00 | 仙丈ヶ岳(3,033m) |
復路
| 時刻 | 地点 |
|---|---|
| 09:08 | 仙丈小屋 発 |
| 09:40 | 小仙丈ヶ岳 |
| 10:19 | 大滝ノ頭(五合目) |
| 11:31 | 北沢峠 |
| 11:39 | テント場 帰着 |
テント場から山頂まで3時間27分、山頂から下りは仙丈小屋を出て2時間31分。合目標識が一合目から八合目まで等間隔に近い形で並んでいるので、自分のペースを測りやすいルートだ。
ルート軌跡・標高プロファイル・心拍の推移は、21座の記録をまとめているPEAK NOTESアプリで公開している。当日のGPSログそのものはYAMAPの活動日記にも上げてある。地図上でルートを追いたい場合はそちらが早い。
装備(1泊テント泊・8月)
| カテゴリ | 内容 |
|---|---|
| ザック | |
| 登山靴 | |
| テント | |
| 寝具 | |
| ウェア | |
| 雨・防寒 | |
| 調理 | |
| 水分 | Platypus ソフトボトル1.0L、Salomon Soft Flask 500ml(山中の水場は仙丈小屋の1か所のみ) |
| 行動食 | |
| 食事 | |
| 電解質 | |
| コーヒー | |
| 照明 | |
| 計測・撮影 | |
| その他 |
テント・寝具・調理まわりは唐松岳のテント泊から変えていない。各ギアの詳細は以下の記事にまとめてある。
このうちテント・寝具・ランタン・翌日使わない食料は、当日テント場に置いていった。山頂へ持ち上げたのは水・行動食・雨具・撮影機材、そしてコーヒー一式だけだ。
戸台パークの駐車場は現金のみ・後払い。シャトルバスの運賃と手荷物料金も現金で用意しておくと早い。
8月6日——テントを張りに行く日

戸台パークから北沢峠へ。約50分の林道
関東から車で向かい、戸台パークに着いたのは昼前だった。高速を降りてからの一般道も長く、この移動そのものが行程の一部になる。前日移動を前提に組むのが現実的だ。
駐車場は半分より少し埋まった程度。木曜に動いたのは正解だった。予定を1本早めて12時台のバスに乗る。
バスは往復とも満車で、帰りの便は3台に増えていた。この山の人気を、座席の数で知る。

北沢峠から徒歩5〜10分。長衛小屋のテント場
北沢峠からテント場までは徒歩5〜10分。担いだ荷物がすぐ下ろせる距離にテント場があるのは、この山の大きな利点だ。
前日の予報は雨だった。実際の8月6日はほぼ一日曇りで、設営を終えたあとに少し降っただけで済んだ。設営も、そのあとの撮影も、予定どおり進んだ。
17:14 テント場のシカ

夕食の準備中、樹林の際まで寄ってきた
夕食の湯を沸かしていると、樹林の際に動くものがあった。 シカだ。それも、かなり近い。
野生のシカを見たのはこれが初めてだった。こちらを一度見て、また草を食べ始める。人に慣れているというより、人を風景の一部として扱っている距離感だった。
この日の夕食はリゾッタ。翌朝はアルファ米と豚汁を食べた。ツナのパウチは薄く収納できて、水煮のわりに荷物として扱いやすかった。
ゴミは一食ごとにリゾッタとアルファ米の袋へ戻し、ジップを閉めて匂いを止める。出発前に気にしていた濡れゴミの問題は、結局この方法で片がついた。
19:10 星を撮る1時間
日が落ちてから、三脚を立ててスターラプスを回した。
| 設定項目 | 値 |
|---|---|
| 解像度 | 18MP |
| シャッタースピード | 30秒 |
| ISO | 400 |
| ホワイトバランス | 自動 |
| タイマー | 10秒(ボタンを押してから撮影開始までの間) |
| 撮影時間 | 1時間(19:10〜20:10) |
開始したときはまだ曇っていて、撮る意味があるのか迷いながらシャッターを切り始めた。1時間後に戻ると、空は晴れていた。
保存されたのは110枚、59分19秒ぶん。出力された動画は7秒で、バッテリーの消費は約25%だった。 流星群はおそらく写っていない。代わりに、人工衛星と思われる直線が1本残っていた。
1枚あたりの実測間隔は約33秒。シャッタースピード30秒に書き込みの時間が乗った値で、設定どおりの挙動だ。1時間で7秒の動画にしかならないと分かったので、次はもっと長く回す。

04:33 出発——ヘッドライトを消した時刻

04:44 北沢峠。まだヘッドライトが要る明るさ
4時33分、テント場を出た。 北沢峠に着いたのが4時44分。ここから登山道に入る。
ヘッドライトを消したのは、一合目に着いた4時58分だった。歩き出して25分。夜が明けた瞬間というのは、実際には「もう要らないな」と思ってスイッチに手を伸ばす、その動作のことだと思っている。

05:25 樹林帯。斜めから光が入ってくる
二合目5時12分、三合目5時34分、四合目5時49分。 樹林帯の登りは景色が変わらない。合目の標識だけが、進んだ距離を教えてくれる。
5時25分ごろ、木々の間から光が差し込んだ。針葉樹の幹が縦に並ぶ林に、斜めの光が入ってくる。歩きながら一番きれいだと思ったのは、実はこの時間帯だった。
06:28 六合目——森林限界を越える

大滝ノ頭(五合目)が6時06分、六合目が6時28分。
六合目の手前で樹林が切れ、視界が一気に開ける。目の前に甲斐駒ヶ岳、その足元に雲海。標高2,663m。ここまでの2時間弱、ずっと木しか見ていなかったぶん、この切り替わりは効く。
07:04 小仙丈ヶ岳——富士山と北岳が並ぶ

北岳(3,193m)の左奥に富士山。1位と2位が並んで見える
小仙丈ヶ岳、7時04分。標高2,864m。
ここからの眺めが、この日いちばん強く記憶に残っている。 正面に北岳。その左奥に、雲海の上へ頭を出した富士山。
日本の1位と2位が、ひとつの画面に収まっている。3週間前に立っていた山を、こうして遠くから眺めるのは奇妙な感覚だった。あそこの標高を体で知っているぶん、距離が実感として測れる。

07:50 藪沢カール。氷河が削った半円
小仙丈ヶ岳から先は、カールの縁を辿る稜線になる。 左手に大きく口を開けた半円。氷河が削った地形が、そのままの形で残っている。
八合目7時24分、仙丈小屋との分岐7時41分。傾斜は緩く、足元は歩きやすい。
08:00 仙丈ヶ岳——3,033m

南アルプス 仙丈ヶ岳 標高3,033m
8時00分、山頂。
富士山の剣ヶ峰はガスの中だった。今回は逆で、空には雲ひとつなかった。雲海は足元にあり、北アルプスの稜線まで見通せる。槍ヶ岳のあの形が、肉眼でわかった。
眺望のある頂と、ない頂。 2座で両方を引いたのは、運がいいのだと思う。
08:35 仙丈小屋——持ち越した一杯

カールを正面に見ながら1杯を淹れる
8時23分に山頂を発ち、8時35分に仙丈小屋へ下りた。 ベンチに座り、湯を沸かして、コーヒーを淹れる。
富士山では、ガスと軽い頭痛のなかで湯を沸かす選択がなかった。ザックに入れたまま持ち帰った一杯を、今回この場所で淹れた。
正面はカール。背後は小屋。風は弱い。 じっくり時間をかけて落としたコーヒーは、素直においしかった。淹れることそのものに使える時間があるかどうかで、この道具の価値は変わる——それが今回いちばんの発見だった。

小屋で買ったコーラ。稜線を背に
コーヒーのあとに、小屋でコーラを買った。 富士山でも山頂で飲んだ一本だ。標高3,000mまで担ぎ上げなくても、小屋で買えるとわかっているだけで、水の計画はずいぶん楽になる。
ピンバッジもここで買った。9時08分、小屋を出る。
下山——同じ道、違う空
小仙丈ヶ岳を通過した9時40分ごろから、ガスが出はじめた。
朝は富士山と北岳が並んで見えていた場所が、白い壁に変わっている。同じ道を、数時間の差で二度歩くと、山は違う顔を見せる。往路が晴天だったのは、単に早く歩き出したからだ。

11時31分に北沢峠、11時39分にテント場へ帰着。撤収して、こもれび山荘でソフトクリームを食べた。復路のバスは予定を1本早めて13時10分発に変えた。早く下りられたぶん、仙流荘で昼食をとる時間ができた。
帰りの高速に乗ったあたりで、ゲリラ豪雨に遭った。山の方を見ると、分厚い雲がかかっていた。日程が1日ずれていたら、この記録は違うものになっていたと思う。


累積上り1,161m、行動7時間04分
振り返り——2/21
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 前日入りのテント泊(北沢峠) | ◎ 4時33分発を無理なく実現。テントを置いていけるぶん、当日は身軽に動けた |
| 早出・早着(04:33発→11:39着) | ◎ 往路は終始晴天。ガスは復路に回った。この原則は21座で崩さない |
| 電解質(粉末+塩味ナッツ) | ○ 行動中の塩分は足りた。水場が仙丈小屋の1か所のみという条件下では粉末が正解 |
| 登山靴(ゾディアックテック GTX) | ○ 岩場のグリップは文句なし。ソールが硬く、7時間を超えると足裏に来る |
| ザック(Gregory Zulu 40) | △ 1泊テント泊が限界。容量よりも、テント一式を出し入れする構造に不満が残った |
| レインウェア・防寒着 | △ 2座続けて未使用。重く嵩張る現行品は買い替えを決めた |
距離11.3km、累積上り1,161m、行動7時間06分。 富士山より距離は長く、上りは80m少ない。数字だけ見れば近い山行だが、体感はまるで違った。
日帰りは、登山口に着いた時点で時計が動き出す。前泊のテント泊は、テントを張った時点で山がもう始まっている。担ぐ重さが増えるかわりに、当日の朝はいちばん身軽な状態で歩き出せる。仙丈ヶ岳は、その組み立てが素直にはまる山だった。
写真では伝えきれない空気がある。映像では語りきれない準備がある。実際に経験しないと得られないものがある。

FUJISAN 3,776m と 仙丈ヶ岳 3,033m。2個目
棚に、2個目を置いた。 ひとつだけのときは広く見えた棚が、2個並ぶと少しだけ列になった。
この棚が21個で埋まったとき、挑戦は終わる。
2座目を終えて、残りは19座。 21座の進捗と各山の記録はPEAK NOTESアプリで追える。
次は御嶽山(3,067m)。9月、黒沢口から登る。ヘルメットの着用が奨励されている山だ。
使用ギア一覧
今回の主役は、富士山から持ち越したこの一式だ。
二重マグカップ&ドリッパーセットは燕製のステンレス。総重量194gで、マグ・ドリッパー・受け皿・受台の4点がひとつにまとまる。
正直に書くと、私自身の今後の山行には少し重い。チタンのシングルマグと比べれば当然重くなるし、ドリッパーは折りたためないので多少は嵩張る。縦走が増えていくなかで、ザックの重量は削る方向に動く。
ドリップをする以上、湯はマグとは別に沸かす。この工程はどのドリッパーを選んでも変わらない。ここは重量の判断材料にならない。
一方で、二重構造のマグはコーヒーが長く温かい。ドリッパーが折り畳み式でないぶん構造がしっかりしていて、傾きを気にせず淹れることに集中できる。山頂やテント場で腰を据えて一杯を楽しみたい人、1泊のテント泊で「おいしいコーヒー」を優先したい人には、はっきり合う。
軽さを最優先する縦走には向かない。だが今回のような1泊なら、この194gを担ぐ価値はあった。

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登山靴は富士山に続いて2座目。岩場でのグリップは相変わらず頼りになるが、7時間を超えるとソールの硬さが足裏に出る。冬の間に近場の山で足を作り直すつもりだ。

湯を沸かしたのはSOTOのアミカスとアルミクッカーセットM。上に書いたとおり湯はマグとは別に沸かすので、この2点は今回の一杯の前提装備でもある。テントは唐松岳から使っているステラリッジテント2で、南アルプスの樹林帯のテント場でも不足はなかった。

| ギア | リンク |
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