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涸沢カールのテント泊で、荷物の重さを初めて意識した。
往路の上高地からの道で、肩への負担が想像以上だった。 PEAK NOTESを続けていく上で、ベースウェイトの見直しは避けられない。 3kg台を実現するためにどこから手をつけるべきか、考え方を整理した。
UL登山という言葉は広まったが、何から始めるべきかが整理されていないことが多い。 「とにかく軽くする」ではなく、どこをどう削るかに判断が必要だ。
ベースウェイト3kg台という数字は、特別な装備投資がなくても実現できる。ただし選択の順序がある。その考え方を整理する。
- この記事について
- ベースウェイトとは何か
- 軽量化の8割はBig 3で決まる
- カテゴリ別の選び方
- ベースウェイト3kg台の試算
- UL登山で注意すること
- まとめ
- 使用・参考ギア一覧
- 関連記事
- Instagram|写真と舞台裏
この記事について
UL(ウルトラライト)登山の入門として、以下をまとめた記事だ。
- ベースウェイトの定義と計算方法
- 軽量化に最も効くカテゴリ(Big 3)の考え方
- カテゴリ別の具体的な選択基準
- 2026年時点の参考ギア
テント泊デビューを検討している登山者、または現在の装備を見直したい人を主な対象としている。特定製品の購入を強く推奨するものではなく、判断軸を整理することが目的だ。
ベースウェイトとは何か
ベースウェイトとは、ザックから消耗品(水・食料・燃料)を除いた、基本装備の総重量だ。
消耗品は行程によって変わるため、装備の「素の重さ」を比較する指標として使われる。
重量の目安
| 分類 | ベースウェイト | 特徴 |
|---|---|---|
| 一般的な日帰り〜小屋泊 | 10〜15kg以上(消耗品込み) | 重さより快適性を優先 |
| 一般的なテント泊 | 8〜12kg(消耗品込み) | ベースウェイト6〜9kg程度 |
| ライトウェイト(LW) | ベースウェイト 4〜6kg | 軽量化を意識したギア選択 |
| ウルトラライト(UL) | ベースウェイト 4kg未満 | 機能を絞った選択が前提 |
| スーパーウルトラライト(SUL) | ベースウェイト 2kg未満 | 高度な経験と判断力が必要 |
「ベースウェイト3kg台」という数字は、ULの入口として現実的な目標になる。SULほど機能を削らずに達成できる水準だ。
総重量で考える:従来型→ULへの3kg削減
消耗品(水・食料・燃料)を含む行動時総重量で見ると、一般的なテント泊1泊の装備は10kg超になることが多い。ULの現実的な目標は7kg前後であり、約3kgの削減が一つの基準になる。
この3kgをどこから削るかが、UL装備選びの本質だ。Big 3(ザック・テント・スリーピングシステム)に手をつければ、その大半は達成できる。
軽量化の8割はBig 3で決まる
Big 3とは、装備の中で重量が大きい3カテゴリだ。
- ザック
- テント(ツェルト・タープを含む)
- スリーピングシステム(シュラフ・マット)
この3カテゴリが、テント泊装備の重量の50〜60%を占めることが多い。逆に言えば、ここを削らずに細かいギアを軽量化しても、効果は限定的だ。
どのカテゴリから手をつけるかは、現在の装備に依存する。まず自分のBig 3の重量を計測することが、軽量化の起点になる。
カテゴリ別の選び方
1. ザック
ザックの軽量化は、持てる荷物の量を考慮しながら進める。フレームレスの超軽量パックは200〜300g台が多いが、10kg以上を入れると背面へのダメージが大きい。荷物量と素材の耐荷重を照らし合わせた選択が必要だ。
2026年時点の選択基準は、フレームあり、またはフレームレス・40L前後・400〜750g台のモデルだ。重さとサポートのバランスが取れた現実的な水準になる。
一般的なフレームドパック(1〜1.5kg台)と比較すると、このカテゴリで400〜900gの軽量化が見込める。Big 3の中でもザックの選択は即効性が高い場合がある。
選ぶ際の確認点は以下だ。
- 容量:40〜50Lが1〜3泊テント泊の標準的な範囲
- 背面長:自分の体格に合うサイズが流通しているか確認する
- 素材:X-Pac・UHMWPE系は軽量だが価格が高い。ナイロン200D前後は耐久性と軽量のバランスが取りやすい
- 取り扱い:海外ブランドは国内で入手できるか・保証対応があるか確認する
- 重量: 480g
- 容量: 40L
- 素材: バリスティック エアライト®ナイロン
- フレームレス(背面パッドあり)・40Lクラスの軽量ザックとして国内流通実績がある。テント泊装備一式を収納できる容量と、480gという軽量を両立している。ただしフレームレス設計のため、重量が増すほど背負い心地への影響が出やすい。
2. テント
テントは重量の大きいカテゴリだ。一般的な山岳テント(2人用)は1.5〜2.5kgの範囲が多い。1.5kg以下に絞ると選択肢は自然と軽量設計のモデルに絞られる。
テントのタイプは大きく3種類ある。
| タイプ | 特徴 | 目安重量 |
|---|---|---|
| ダブルウォールテント(自立型) | 設営が安定・汎用性高い | 0.9〜1.5kg |
| ダブルウォールテント(非自立型) | 軽量・設営に習熟が必要 | 0.6〜1.0kg |
| タープ・ツェルト | 最軽量・天候への対応力が問われる | 0.3〜0.7kg |
入門段階では自立型のダブルウォールテントを推奨する。岩場やペグが打ちにくい場所でも対応でき、天候急変時の安全マージンが高い。
- 重量: 900g(本体+フライ+フレーム)
- 1人用・自立型・ダブルウォール・国産
- 「1kg以下の自立型山岳テント」という希少な選択肢
3. スリーピングシステム
スリーピングシステムはシュラフ(寝袋)とスリーピングマットで構成される。Big 3の中でも特に季節・気温条件との照合が必要なカテゴリだ。
軽量化の基本方針は以下になる。
シュラフ(スリーピングバッグ): - ダウン素材を選ぶ(同じ保温力でポリエステルの1/2〜1/3の重量) - 快適温度より「使用限界温度」で選ぶと不必要に重くなる - キルト(体の下側が省略された形状)はさらに軽量だが、寒冷時の対応力が下がる
夏山〜秋山のテント泊では、300〜500g台のダウンシュラフが現実的な範囲だ。
- 重量: 531g(スタッフバッグ除く)
- 素材: 800フィルパワー EXダウン、10デニール・バリスティック エアライト®ナイロン
- 快適温度: 4℃ / 使用限界温度: -1℃
- 4℃に対応しながら531gに抑えたモデル。夏山〜初秋の3,000m級テント泊に適した温度帯。国産シュラフの信頼性がある。
スリーピングマット: - インフレータブル(空気注入式)はR値(断熱性能)が高く軽量だが、パンクリスクがある - フォームマット(クローズドセル)は軽量・耐久性は高いが嵩張る - 組み合わせ(薄いインフレータブル + フォームマット下敷き)もULで一般的
参考:サーマレスト NeoAir XLite NXT(Rサイズ)
- 重量: 370g
- R値: 4.5
- サイズ: 51×183cm(Regularサイズ)
- 高R値と軽量を両立したインフレータブルマットの定番。夏山から秋山の低温期まで対応できる断熱性を持つ。
4. クッカー・食器
消耗品(食料・燃料)を除く調理器具・食器系は、選択次第で500〜1,500gの差が出るカテゴリだ。
最も効率的な軽量化はチタン製クッカーへの移行だ。ステンレス製と比較して同容量で30〜50%軽くなる。
- 重量: 95g
- 容量: 600ml
- 素材: チタン(燕市製)
- 単体でのベストバイ評価が高いモデル
軽量化の観点では、「クッカー1個+チタンスプーン1本」という最小構成も合理的だ。山行日数・メニューによって必要な容量は変わるが、ソロの日帰り〜2泊では600〜750mlの1個構成で対応できる場合が多い。
5. 衣類・レインウェア
衣類の軽量化は、レインウェアの選択が最もインパクトが大きい。山行中に必ず携行するため、100〜200gの差は蓄積する。
100〜170g台のレインジャケットが、現在のUL装備の水準になっている。耐水圧と透湿性の数値でコンディション想定を確認してから選ぶ。
- 重量: 143g
- 素材: 7デニール バリスティック エアライト®ナイロン(スーパードライテック 3レイヤー構造)
- 耐水圧: 20,000mm以上 / 透湿性: 50,000g/m²・24hrs
- 山岳用レインウェアとして高い防水・透湿性能を持ちながら143gに抑えたモデル。収納時は0.6Lとコンパクト。
衣類全体の軽量化は「着用しないものを持たない」判断が前提になる。行程・天候・季節に対して必要なレイヤーを選択する技術が問われる部分だ。
ベースウェイト3kg台の試算
上記のカテゴリを軽量化した場合の試算例だ。これは一例であり、実際には個人の体力・山行計画・安全マージンの判断による。
| カテゴリ | 参考モデル | 重量 |
|---|---|---|
| ザック | モンベル バーサライト パック 40 | 480g |
| テント | ライペン(アライテント)SLソロ | 900g |
| スリーピングバッグ | モンベル シームレスダウンハガー800 #3 | 531g |
| スリーピングマット | サーマレスト NeoAir XLite NXT(R) | 370g |
| クッカー | エバニュー Ti U.L. Pot 600 | 95g |
| レインジャケット | モンベル バーサライトジャケット | 143g |
| その他 | バーナー・ランタン・防寒着・レインパンツ・ウォーターボトル・充電器・コンパス・着替え等 | 約1,200g |
| 合計 | 約3,720g |
「その他」はバーナー・ランタン・防寒着・レインパンツ・ウォーターボトル・充電器・コンパス・地図・着替え等の合計目安。山行計画・季節によって大きく変動する。
全装備の合計は約3,720g(ベースウェイト約3kg台)。消耗品(水2L・食料・燃料)を加えると行動時の重量は6〜7kg台になり、1〜2日のテント泊が現実的な範囲に入る。
UL登山で注意すること
軽量化は「ギアを削る」ことではなく、「必要なものを見極める」判断だ。安全に関わる装備を省く方向に進んではいけない。
特に以下は削らない判断を推奨する。
- レインウェア(山では天候急変が前提)
- ビバーク装備(ツェルト・エマージェンシーシート)
- 救急キット
- 地図・コンパス(デジタルのみへの依存は危険)
ULギアは一般的に高価だ。急いで全てを揃えようとすると出費が大きくなる。Big 3から順番に投資し、各カテゴリの判断基準を実際に使いながら理解していく方が長期的に合理的だ。
まとめ
ベースウェイト3kg台は、Big 3の選択で8割が決まる。
ザック・テント・スリーピングシステムの3カテゴリを軽量化すると、合計で2〜3kg削れる可能性がある。残りのカテゴリは積み上げていく。
「まず何から?」という問いへの答えは、現在の装備でBig 3の合計重量を計測することだ。最も重いカテゴリに手をつけるのが、最も効率的な軽量化になる。
| Big 3 | 軽量帯の目安 | 参考 |
|---|---|---|
| ザック | 400〜750g | モンベル バーサライト パック 40(480g) |
| テント | 600〜1,500g | ライペン(アライテント)SLソロ(900g) |
| スリーピングシステム | 800〜1,000g | シームレスダウンハガー800 #3(531g)+NeoAir XLite NXT(370g) |
使用・参考ギア一覧
| 商品名 | リンク |
|---|---|
| モンベル バーサライト パック 40 | Amazonで見る |
| ライペン(アライテント)SLソロ | Amazonで見る |
| モンベル シームレスダウンハガー800 #3 | Amazonで見る |
| サーマレスト NeoAir XLite NXT | Amazonで見る |
| エバニュー Ti U.L. Pot 600 | Amazonで見る |
| モンベル バーサライトジャケット | Amazonで見る |
※スペック情報の出典:
モンベル バーサライト パック 40 公式ページ(2026年4月確認)
アライテント SLソロ 公式製品ページ(2026年4月確認)
モンベル シームレスダウンハガー800 #3 公式ページ(2026年4月確認)
サーマレスト NeoAir XLite NXT 公式ページ(2026年4月確認)
モンベル バーサライトジャケット 公式ページ(2026年4月確認)
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